ことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和6年11月号より転記より転記
 ◆「菊の香や月夜なからに冬に入る」(正岡子規、1867−1902)。秋に咲く菊の花の香りや、月という秋の季語を用いて子規は立冬を詠んだ。いつの時代も、秋は短く過ぎゆくものだろう。
 暑い夏を乗り越えてようやく迎えた実りの季節の光景は誇らしい。見慣れた町さえ新鮮に感じるほどだ。しかし、スポーツの秋、読書の秋などいわれるが、せわしなく暮らしていると、あっという間に木枯らしが吹く。今年は11月7日に立冬を迎える。
  ◆法然上人は、私たちの日常を「昨日も徒らに暮れぬ。今日もまた、虚しく明けぬ。いま幾たびか暮らし幾たびか明かさんとする」と戒められた。
  ◆同じことを丁寧に繰り返し、積み重ねていく毎日の営みほど尊いものはない。知らず知らず無為に過ごしてしまう私だちだが、たとえ辛い日、悲しい日であったとしても、大切な人生の一日である。鮮やかな黄色に色づいた落ち葉の中を歩いていると、冷たい風に吹かれていても少し爽やかな気持ちになる。ささやかな楽しみを大切に豊かな冬を迎えよう。
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