ことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和6年7月号より転記より転記
 ◆今月は七月。「七」に因み、「七仏通誡偈」を紹介する。その内容は「諸悪莫作 衆善奉行 自浄其意 是諸仏教(諸々の悪をなさず、諸々の善を実践し自ら己の心を浄めよ。これが諸仏の教えなり)」である。釈尊と過去の六仏が共通して誡めとした偈文なので、「七仏通誡偈」という。
 本来は古代インド語で表現されていたものを、ある中国人がこう訳したが、漢訳者によって表現は異なる。実は三蔵法師のモデルになった玄奘もこれを漢訳しており、「自浄其意」に相当する箇所を「自調伏其心(自らその心を調伏せよ)」と訳したが、この方が原意に近い。この訳を踏まえて、仏教学者の山口益はこれを「悪をなさず、善を実践する、その自分の心をもう一度見直せ」と興味深い解釈をした。
 ◆人は悪をなさず、善を実践する自分に満足してしまうので、その行為を見直すことは難しいが、善を押しつけている場合もけっこうある。善を実践したときほど、その行為を見直す必要があるようだ。その仏教学者はこれを「善の懺悔」と呼んだ。善の押売ほど厄介なものはない。
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