ことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和7年4月号より転記
 ◆春は短い。穏やかな過ごしやすい時季を感じずに、暑くなったと感じる人は多くいるのではないだろうか。暦の上では5月5日に立夏となる。

 ◆「われはたゝほとけにいつかあふひぐさこゝろのつまにかけぬ日そなき」(私はただひたすら、いつの日か阿弥陀仏にお会いするのだと、葵祭で葵をものの端に掛けて飾るように、心の端に掛けて思わない日などなとよ)大本山百萬遍知恩寺の伝承では、法然上人が賀茂の河原にて賀茂祭(葵祭)を見て詠まれたという。『法然上人行状絵図』に夏の御歌として、また『新後拾遺和歌集』にも収められている。

 ◆葵祭は、平安時代より続く、天皇の勅使が派遣されて行われる祭祀の一つ。5月1日に諸行事が始まり、15日には御所より下鴨神社を経て上賀茂神社へと平安装束を纏った行列が進む「路頭の儀」が行われる。美しい歴史絵巻を見るようであるが、法然上人がご覧になったと思うと特別な感慨を覚える。上人は華やかな行列を見ながらもお念仏をとなえ、阿弥陀さまと心が離れなかったのだろう。
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