ことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和6年9月号より転記より転記
 ◆彼岸の中日には、真西に沈む太陽の姿を拝して日想観。が行われる。これは浄土宗が拠り所とする経典の一つ『観無量寿経』に説かれる極楽を段階的に観想する13の方法の第一で、沈む太陽の円かな姿を眼に焼き付けるのである。
 極楽は西の方角に十万億の仏国土を過ぎた彼方にあると説かれる。しかし、地球が球体で、日没が地球の自転によって起こることを認識している現代人にとって、教えを字句通り理解するのは難しい。
 ◆かつて「西方十万億土をいかに説くか」という議論の場において、突如、西の彼方に沈む太陽の金色の光芒が会議室に差し込み、部屋全体を光で満たす光景に邏遇した。圧倒的感動のひとときに、私の中で全ての議論は消え失せ、いかなる科学的知見も、この感動は抑えられないと実感した。
 ◆以来、私にとって西方十万億土の教えは、あの日の感動とともにある。この教えの核心は、ことばの中にはなく、遥か西方に沈む夕日を拝する感動の中にこそあるのだ。
 ◆秋彼岸、夕日を拝し、極楽に在す阿弥陀仏のいのちを実感して、お念仏の励みとしたい。
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