ことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和7年12月号より転記
 ◆大阪・四天王寺の西門は、「極楽浄土の東門」にあたるという信仰がある。中世には 夕日の彼方に極楽を想う「日想観」を行ずるために、多くの僧や人々がここに集まった。

 ◆かって、西門の鳥居の前には難波の海が広がり、沈みゆく夕日を拝み、「南無阿弥陀仏」と念仏をとなえる人々の声が響き、迎講(阿弥陀如来が人々を極楽に導く様子を演じる法会)も盛んであったという。鳥居はこの世と浄土を隔てる結界の役目を果たしていた。すぐそばを熊野街道が通り、京都・大坂から熊野詣でに向かう旅人も立ち寄った。

 ◆法然上人の伝記には上人が訪れたことが記され、上人二十五霊場六番の阿弥陀堂もその名残とされる。四天王寺に所蔵される上人が修行の日々を送った比叡山の青龍寺から迎えられた観音・勢至菩薩が片足を跳ね上げている、珍しい阿弥陀三尊像にもこの縁を感じる

 ◆今も春秋の彼岸の中日には、西門の真ん中に沈む夕日を前に日想観が行われ、『観無量寿経』が読誦され、多くの参詣者が法然上人の観想した同じ夕日に極楽往生を願う。


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